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マイペース70代

マイペース70代

Nちゃん(中学のクラスメート)との再会

Nさんは、中学を卒業してすぐに就職し、
縁があって根室の人と出会い、結婚と同時に根室で暮らすことになった。
だから、クラス会などにもあまり参加できず、
最後に会ったのは15年ほど前のクラス会の時だった。

彼女は、自分では「私、頭悪いから・・」と言うのだが、
中学時代の彼女は、明るくて人気者であった。
彼女のことを嫌っている人を、私は知らない。
家庭の事情もあり中卒で働くことになったけれど、
私は彼女を「賢い人」だと思っている。
本当に頭が悪ければ、あれほどみんなに人気や人望があるとは思えない。
もちろん、私は彼女の成績を知っているわけではないから、
成績の良し悪しはわからないけど・・。

当時は、まだ中卒で就職する人は結構いたけれど、
それでも高校進学がそろそろ普通になってきた時代だった。
だから私は、中卒で就職した友人達を、
心のどこかで「気の毒だな」と感じていた。
そのせいもあり、彼女に対しても
「きっと苦労したに違いない」と思っている部分がある(あった)。
だが、彼女とゆっくりとおしゃべりをする機会を得て、
人の幸せは、学歴などでは決まらないものだと痛感した。

私はNさんと格別仲良しだったわけではない。
おとなしかった私は、中学時代に彼女と楽しく話した記憶もない。
何せ、彼女はいつもみんなの人気者だったから、
明るい笑い声の中心には彼女がいるという感じで、
私はそれを遠巻きに羨ましく見ているような位置関係だったのだ。

そのせいもあり、今回の訪問にしても遠慮がちに電話をした。
すると、昔のままの明るい声で
「ワーッ、○○ちゃん? 来てくれるのー? うれしいっ!!」と、
電話の向こうで歓声が上がり、
私は面食らうほどだった。
そして、「絶対にうちに泊まってヨッ!」と言われたのだが、
人の家では妙に神経が高ぶって眠れない体質の私は、
彼女の懇願を振り切ってビジネスホテルにチェックインしたのだ。

彼女は、首をながーくして私を待っていてくれた。
テーブルの上には、花咲ガニなど根室の海の幸がドーン待っていてくれた。
高校生の娘さんが、ニコニコしながら彼女と一緒に迎えてくれた。
私のお土産はと言えば、
数年前のクラス会の時の写真や名簿。
そして、私の知っている旧友たちの近況話である。

彼女の機関銃のような質問の嵐をかいくぐるようにカニにむしゃぶりつき、
思い出話や最近の友人達の様子などに話が弾んだ。
私は、彼女自身の近況も知りたいのだが、
「そんなことより、○○さんはどうしてるの?」などと、
自分の話はあまりしようとしない。
実は、彼女の家はとても素晴らしい家で、
最近新築したようなのだが、
「すごい家だね、いつ建てたの?」と聞いても、
「そんなこと、どうでもいいでしょ」という感じで
家のこともご主人のことも、
今は体調を悪くして入院中というお姑さんのことも、
自分自身に関することはするりとかわされてしまうのだ。
そして、ひたすら昔の友達や先生達のことを聞きたがる。

そして私は気付いた。
どんな思い出話をしても、誰の話をしても、
彼女が覚えている友人達は「みんな好い人」だということに。
「あの先生は、大っキライ!!」という先生はいたけれど、
それは私が見てもイヤ先生だったし、例外的な人物だった。

そうか、昔から彼女は、「みんな大好き」な人だったのだな・・と思った。
彼女が人気者だった理由の一つが、それだったのだろう。
そして、自分のことよりも他の人のことを思っているということ。
それが一番大きいことかもしれない。
決して家庭的に恵まれていたわけでもないのに、
どうしてこのような人が育ったのだろうと、
話の途中からそれが不思議に思えてきた。

やがてご主人が帰宅し、彼女が話してくれなかった色々なことを、
そのご主人から聞くことになる。
既にビールで酔っ払い始めている彼女は、
ハイテンションでそれまで私から聞いたことを、
写真を見せながら話しまくる。
「すごいでしょ?私の友達って、みんな頭がいい人ばっかり。
 これ、○○の先生になってるんだって! この人は△△だって。
 この人もねえ、すごく頭良かったんだよ。
 この人はすごく親切でね、私んち貧乏だったから、随分世話になったの」

それをご主人は「いつも、こんなんだー」と笑いながら、
お仕事のことや、昨年家を建て直したことなどを教えてくださった。
そして二人で口をそろえて、
「どうして泊まってくれないんだ? キャンセルしなさい」などと言ってくれる。

中卒で就職をした彼女に、苦労がなかったとは思えない。
大卒で年下のご主人との結婚だって、色々なことがあっただろう。
それでも彼女は、この地で生来の明るさと優しさで、
たくましく幸せを紡ぎ上げてきたのだ。

同級生の人生は、様々である。
早世した人もいるし、同じ年でアルツハイマーに罹った人もいる。
お子さんやご主人を亡くした人、病気と闘っている人、
仕事やお子さんのことで悩みを抱えている人などなど、
苦労していない人の方が少ない。

しかし、苦労と不幸とは同じではない。
彼女のように、周囲にいる人がみんな良い人ならば、
大きな苦労も乗り越えられるのは確実。
そして、周囲の人を「みんないい人」にするのは、
本人の感じ方考え方次第なのだろうと教えられる思いだった。
彼女と話していると、
私自身も「私ってとっても良い人かも。頭もいいかも」と思えてくるのだから。

彼女がもっと近くにいてくれたなら、
今苦労や悩みの中にいるクラスメイト達は、
もっともっと幸せになれるような気がする。

Nさん、本当にありがとう。
今度は泊まらせてもらうね。

(2005年10月16日)


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